利回りの最低ラインは?下がった収益物件への対処方法
収益物件の利回りは、投資金額に対する収益の割合を示し、投資の収益性を判断する重要な指標です。一般的に表面利回りや想定利回りは5%、実質利回りは3%を下回ると、投資金額の回収に時間がかかりリスクが高まります。
収益が低下した物件への対処方法としては、売却益を狙う方法や利回りを上げる方法があります。売却益を狙う場合、賃貸需要の高いエリアの物件は利回りが低くても高値で売却できる可能性があります。利回りを上げるには、地域のニーズに合わせた改善や、諸経費や家賃設定の見直しが効果的です。
目次
収益物件の利回りはどれを見たらいい?
利回りとは、投資金額に対する収益の割合のことを指します。なお、利回りは『利益÷投資金額÷運用年数×100』の数式で求められます。こちらでは、利回りの種類や利回りの最低ラインの目安について、詳しくご紹介いたします。
◇利回りの種類
一口に利回りといっても、利回りは大きく分けて3つの種類が挙げられます。例えば、表面利回り、想定利回り、実質利回りなどがそれにあたります。
それぞれの特徴については以下の通りです。
・表面利回り
表面利回りとは、グロス利回りとも呼ばれており、投資金額と年間家賃収入のみを用いて求められる利回りのことを指します。
表面利回りは、次の計算で求めます。
表面利回り=年間家賃収入÷物件購入価格×100
ただし、表面利回りには、投資時の諸費用や1年間の維持・管理費などは含まれないため、正確な収益性の把握には適していません。
・想定利回り
想定利回りとは、投資金額と年間家賃収入の想定額のみを用いて求められる利回りのことを指します。
表面利回りは、次の計算で求めます。
表面利回り=年間想定家賃収入÷物件購入価格×100
想定利回りは表面利回りと同様に投資時の諸費用や1年間の維持・管理費などは含まれていません。また、名前のとおり、想定利回りはあくまでも想定額であるため、実際の収益性は想定額より低くなる可能性があります。
・実質利回り
実質利回りとは、ネット利回りとも呼ばれており、投資金額と年間家賃収入に加えて、年間維持管理費を用いて求められる利回りのことを指します。そのため、表面利回りや想定利回りとは異なり、実質利回りは正確な収益性の判断が可能です。
実質利回りは、次の計算で求めます。
実質利回り=(年間家賃収入-年間維持管理費)÷物件購入価格×100
一般的に、不動産投資においては実質利回りを重視します。ただし、実質利回りが掲載されている不動産投資ポータルサイトや物件情報などは少ないため、実質利回りを把握したい場合はご自身で計算しなければなりません。
◇利回りの最低ライン目安
不動産投資の場合は投資の種類により、異なってくるため、利回りの最低ラインにおける絶対的な正解はありません。しかし、表面利回りや想定利回りは5%、実質利回りは3%を下回ると、投資金額の回収に時間がかかり過ぎてしまうため、さまざまなリスクを招くおそれがあります。
利回りが低くなる理由
利回りが低くなる理由はいくつか挙げられます。例えば、物件価格が高い、家賃が低いことなどがそれにあたります。こちらでは、利回りが低くなる理由について、それぞれ、詳しくご紹介いたします。
◇物件価格が高い
物件価格が高い場合、利回りが低くなるおそれがあります。そのため、都市部と地方部を比較すると、物件価格が低い地方部の利回りが高い傾向にあります。
また、円安による影響に伴い、海外の投資家に日本の収益物件が数多く買い漁られてしまいました。これにより、物件価格が上昇し、東京および近郊の利回りが低くなったといわれています。
◇家賃が低い
不動産投資を行う場合、長い年月をかけて、投資金額を回収していくこととなります。しかし、投資金額が高いにもかかわらず、家賃を低く設定している場合は利回りが低くなるおそれがあります。
また、築年数の経過とともに家賃は下落するため、投資時と同等の家賃収入を得られる可能性は低いでしょう。そのため、不動産投資を行う場合は家賃が下落し、利回りが低下する可能性を考慮しておく必要があります。
低利回り物件の特徴
低利回り物件に共通する特徴はいくつか挙げられます。例えば、賃貸需要が高い物件、築浅の物件などがそれにあたります。こちらでは、低利回り物件の特徴について、それぞれ、詳しくご紹介いたします。
◇賃貸需要が高い物件
上述のとおり、都市部と地方部を比較すると、物件価格が低い地方部のほうが高い利回りとなる傾向にあります。
しかし、必ずしも、利回りが高い物件のほうがよいとは言い切れません。その理由として、人口が多く、利便性が高いエリアの場合は長期的に安定した収入を得られる可能性が高いためです。
都市部などの賃貸需要が高い物件の場合、利回りこそ低いものの、長期的な収益性に優れている可能性が高いです。東京都であれば、千代田区、港区、中央区、渋谷区、新宿区の都心5区は人気の高いエリアであるといえます。
◇築浅の物件
築年数が古い物件と比較すると、築浅の物件は価値が高いため、利回りが低い傾向にあります。特に築年数が浅いことに加え、立地がよい場合は利回りこそ低いものの長期的な収益性に優れている可能性が高いです。
千代田区、港区、中央区、渋谷区、新宿区の都心5区の最寄り駅に近いところにある物件であれば、売却されるとなった際に場合によってはキャピタルゲインを期待できるかもしれません。
利回りの低い収益物件への対処
上述のとおり、利回りが高い物件のほうがよいとは言い切れません。その理由として、たとえ、利回りが低くても、長期的な収益性を期待できる可能性を否定できないためです。こちらでは、利回りの低い収益物件に対する対処法について、詳しくご紹介いたします。
◇売却益を狙う
たとえ、利回りが低くても、売却益を狙える可能性があるのであれば、売却益を狙うといった選択肢も挙げられます。
売却益を狙える可能性が高い物件とは、賃貸需要が高い人気のエリアにある物件のことを指します。こういった物件の場合は利回りが低くても、入居希望者が見つかる可能性が高いため、売却益を狙える可能性があります。
◇利回りを上げる
利回りを上げたいのであれば、いくつかのポイントを確認してみるとよいでしょう。なお、利回りを上げたい際に確認すべきポイントとして、以下の4つが挙げられます。
・地域のニーズに適した物件であるかどうか
利回りを上げたいのであれば、はじめに地域のニーズに適した物件であるかどうかを確認します。
地域のニーズに適していない可能性があると感じられる場合は入居者の方にアンケート調査などを行い、入居者の方が求めるニーズを把握する必要があります。なお、改善できる可能性がある場合は改善策を取り入れてみるとよいでしょう。
・月々の諸経費
月々の諸経費(管理費、修繕費、共有部分の水道光熱費、点検清掃費)やローンの利息を確認します。これらは利回りに影響を及ぼす可能性があるため、しっかりと確認し、改善できる可能性がある場合は改善策を取り入れてみるとよいでしょう。
・家賃設定
最後に家賃相場と比較し、月々の家賃を低く設定してしまっていないかどうかを確認します。もしも、家賃相場よりも低く設定しているようであれば、家賃の改定を検討してみましょう。
ただし、急激に家賃を引き上げてしまうと、入居者から反発を招くおそれがあるため、家賃の引き上げを行う場合は十分な注意が必要となります。
収益物件の利回りとは、投資金額に対してどれだけの収益が得られるかを示す指標であり、投資の収益性を判断する上で非常に重要な役割を果たします。
特に不動産投資では、表面利回りや想定利回りが5%を下回る、あるいは実質利回りが3%を下回る場合、投資金額の回収が長期化し、リスクが増大する可能性があります。これらの指標は、収益性の安定を図るために目安として活用されます。
収益が低下した物件への対処方法としては、売却益を狙う方法です。特に賃貸需要の高い都市部や人気エリアに位置する物件であれば、利回りが低くても資産価値が高く、物件を高値で売却できる可能性があります。これにより、利回りが低下しても利益を確保することが可能です。 また、利回りを改善する方法も効果的です。地域のニーズを把握し、物件のリフォームや設備改善を行うことで魅力を高め、経費や管理費の見直し、さらにローンの金利や家賃設定の再検討を行うことで、利回りの向上が期待できます。