不動産投資における利回りとは?収益物件を高く売るポイント
不動産投資の利回りは、投資額に対する収益の割合で、「表面利回り」は物件価格と家賃収入の比率を示し、税金や管理費は考慮しません。一方、「実質利回り」はコストを考慮し、より実態に近い評価を提供します。
利回りは築年数、地域、告知事項で変動し、高い利回りが必ずしも良いとは限らず、リスクや諸経費も考慮する必要があります。高く売るには、タイミング、利回りの向上、複数査定が重要です。
目次
不動産投資における利回りとは?
利回りとは、投資した金額に対する収益の割合を示す指標のことです。不動産投資においては、物件取得費に対する1年間の家賃収入の割合を示します。利回りは、物件の収益力を評価するための指標のひとつです。
不動産投資での利回りは複数の種類があり、それぞれ算出方法が異なります。表面利回りは、物件購入価格と1年間の家賃収入をもとに計算し、実質利回りは運営時や購入時のコストも考慮します。
◇表面利回り
物件の価格に対する現時点での家賃収入の割合を示し、グロス利回りとも呼ばれています。不動産投資で利回りといえば、通常はこの表面利回りを指します。計算方法は簡単で、年間の家賃収入を物件購入価格(税込)で割るだけで、税金や管理費などは考慮しません。
表面利回りは、現状の空室状況を反映しているため、物件を購入した直後にどの程度の利回りが見込めるかを把握するのに役立ちます。
表面利回り(%)=(年間家賃収入 ÷ 物件購入価格(税込)) × 100
◇実質利回り
実質利回りは、表面利回りから運営時や購入時のコストを差し引いたものです。ネット利回りやNOI利回り(NOIはNet Operating Incomeの略称)とも呼ばれています。計算方法の基本構造は表面利回りと同じですが、コストを考慮するため計算が複雑になります。
実質利回り(%)=(年間収入 – 年間諸費用) ÷ (物件購入価格(税込) + 購入時諸費用) × 100
コストに含まれる具体的な費用は、購入時の諸費用、年間運営費、固定資産税、火災保険料、修繕費などです。
不動産投資における利回りはどう決まる?
画像出典:フォトAC
投資物件を選ぶ際に最も重要となるのが利回りのため、収益物件を高く売るためには、利回りがどのように変動するか理解しておくことも大切です。利回りが変動する主な要因には、築年数、地域、告知事項があります。
◇築年数
利回りは、一般的に新築物件のほうが低く、中古物件で築年数が経っているほど高くなる傾向にあります。これは、新築物件に比べて中古物件のほうが空室リスクや修繕リスクが高いためです。リスクが高いにもかかわらず利回りが低いと、購入者が少なくなります。そのため、中古物件は販売価格が下がり、結果的に利回りが上昇するのです。
東京での新築物件の表面利回りの目安は、4%程度です。中古物件の場合は、築年数が20年以下では6%、築年数が20から35年程度では7~10%を目安にするとよいでしょう。
◇地域
不動産の理想的な利回りは、地域によっても異なります。都市部では地価が高いため、物件の購入価格も高くなり、利回りが低くなる傾向にあります。
不動産研究所の「不動産投資家調査(2021年10月)」によれば、最も利回りが低い地域は東京で、次いで横浜、名古屋、大阪なども低い利回りとなっています。
都市部は、利回りが低く利益が出にくいのは事実です。しかし、その一方で賃貸需要が高く、空室リスクが低いというメリットもあります。
出典元:一般財団法人 日本不動産研究所「第45回 不動産投資家調査(2021年10月現在)」
◇告知事項
告知事項とは、物件に重大な欠陥があることを示します。不動産取引において、告知事項に関する情報は不動産取引に重要な影響を与えるため、売主は買主にこの情報を事前に伝えることが義務付けられています。
告知事項には、心理的瑕疵(自殺や事件など)、物理的瑕疵(シロアリ、雨漏りなど)、環境的瑕疵(騒音、悪臭など)、法的瑕疵(建ぺい率や容積率オーバーなど)の4つがあります。告知事項のある物件は、通常より割安で購入できるため、利回りが高い傾向があります。
不動産投資における利回りを確認する際の注意点とは?
利回りが高すぎる物件は表面利回りで、実態とかけ離れている可能性があるため注意が必要です。不動産投資で利回りを正確に確認するためには、空室期間や諸経費を考慮することが重要です。
◇高すぎる利回りには注意
広告や物件資料に記載されている利回りは、ほとんどが表面利回りで、購入時の諸経費や賃貸経営の諸経費、空室リスクなどはほとんど考慮されていません。
例えば、一棟アパートや一棟マンションの利回りが高い場合、満室時の想定利回りが表示されています。極端に高い利回りの高い不動産投資用物件は、実態とかけ離れている可能性があるため、算出条件を確認することが重要です。
◇高い利回りがよいとは限らない
投資対象となる物件は、利回りの高い物件だけではありません。資産価値が高く人気のある投資物件が、実は利回りが低いことがよくあります。その理由は、利回りが低くても、立地条件がよく最新設備を搭載した物件であれば、賃貸需要が高く空室リスクが低いため、投資対象として優れているからです。
不動産投資において利回りを確認する際は、表面利回りだけでなく、空室期間や諸経費を考慮したシミュレーションが大切です。
収益物件を高く売るポイントとは?
収益物件は、工夫次第でより査定額よりも高く売却することが可能です。収益物件を高く売る方法としては、タイミングを見極める、利回りを上げる、複数の不動産会社に査定を依頼するなどがあります。
◇タイミングを見極める
収益物件は、満室時や大規模修繕の直前に高く売れる傾向があります。建物が老朽化して多額の修繕費がかかると、修繕費用が売却代金を大きく上回る可能性があります。築古の物件は、修繕前に売却することも検討するとよいでしょう。
また、不動産は景気がよくなると需要が高まり、価格が上昇します。不動産価格が上昇するタイミングを見計らって、売りに出すことも重要なポイントです。
◇利回りを上げる
収益物件の売却価格は利回りを基準に算定されるため、利回りが高くなるほど査定価格も上昇します。利回りを上げるためには、家賃を高く維持しておくことが不可欠です。
そのために、設備を適切なタイミングで交換し、日ごろから掃除やメンテナンスを行い、物件をきれいな状態に保っておく必要があります。
◇複数の不動産会社に依頼する
不動産会社はそれぞれ得意分野があるため、不動産売却において不動産会社選びはとても重要です。収益物件売却を成功させるためには、収益物件の売買を専門にし、豊富な実績と経験を持つ不動産会社に相談することが推奨されます。
信頼できる不動産会社を選ぶためには、複数の不動産会社に査定を依頼し比較して選ぶことも大切です。
不動産投資における利回りは、投資額に対する収益の割合を示す指標です。主に「表面利回り」と「実質利回り」があり、表面利回りは物件価格と年間家賃収入の比率を示し、税金や管理費を考慮しません。実質利回りは、運営費用などのコストを引いた後の利回りで、より実態に近い評価を提供します。
利回りは築年数、地域、告知事項によって変動し、新築物件より中古物件、都市部より地方の方が利回りが高くなる傾向があります。高い利回りが必ずしも良いとは限らず、空室リスクや諸経費を考慮することが重要です。収益物件を高く売るためには、適切なタイミングを見極め、利回りを上げ、複数の不動産会社に査定を依頼するとよいでしょう。