ローンが残っている収益物件は売却できる?ローン返済時の注意点
収益物件のローンが残っている場合、売却は難しいですが、アンダーローンの場合は可能です。オーバーローンの場合は、自己資金からの返済、追加融資、または任意売却で対処できます。任意売却には金融機関の承諾が必要で、高値での売却が期待できます。
売却プロセスでは、現状把握から始まり、不動産会社との契約、売却、引き渡し、抵当権抹消、オーナー変更通知が必要です。
目次
ローンが残っている収益物件の売却は可能?
収益物件は、居住用物件に比べてローンが高額である場合が多く、売却を検討している際も結構な金額のローンが残っている場合が多いです。ローンが残ったままで売却できるかというと、基本的には売却はできません。
ただし、ローンの残債があった場合でも一定の条件を満たしていれば売却できます。
◇アンダーローン
アンダーローンとは、物件を売却した後の売却金額がローン残高よりも上回っていてローン完済が可能である状態のことです。不動産売却では、抵当権の抹消が絶対条件でありローンが残っている状態では抹消できません。
しかし、アンダーローンの場合は不動産を売却することでローンが完済できるため、売却が可能です。
◇オーバーローン
オーバーローンとは、物件を売却した売却金額がローンの残高より下回ることをいいます。この場合、アンダーローンとは異なりローンが残ってしまうため、このままでは売却できません。オーバーローンの場合でも売却できる方法はあるため、試してみましょう。
オーバーローンを解消するには?
オーバーローンの場合でも収益物件を売却したいという方も多くいます。オーバーローンの場合は次の3つの方法で売却が可能です。
◇自己資金から返済する
自己資金からのローン返済は、最も早くローンを返済できます。自己資金とは、現金・預金・有価証券・その他別の不動産、親族など身内からの借り入れなどです。身内からの借り入れであれば、金融機関からの融資と異なり利息などもありません。
しかし、自己資金からの返済はあくまで資金があることが前提であるため、ローンを返済してしまうと手持ちの資金が減ってしまいます。自分の老後資金や子どもの教育資金、その他生活に使う資金が減ってしまうため、自己資金での返済を考えている場合は注意が必要です。
◇追加の融資を受ける
金融機関で提供している住み替えローンでのローン返済もできます。新しく購入する物件のローンと売却する物件のローンを両方返済していく方法です。
この方法は、自分の資金を減らさないデメリットも大きく、二重に返済しなければなりません。その分、借入額も大きくなるため、審査基準も厳しくなります。
◇任意売却を行う
任意売却とは、金融機関の承諾を得た上で抵当権を抹消して売却する方法です。任意売却の場合は、物件を売却後にローンを返済できます。
また、任意売却は競売にかけるよりも高値での売却が可能なのもメリットのひとつです。
ただし、任意売却をするには下記の条件を満たさなければなりません。
・売却までに余裕がある期間を設けている
・ローンを滞納している(返済能力がない)
・税金の滞納による差し押さえを受けていない
・連帯保証人の合意を得ている
ローンが残っている収益物件を売却する流れ
画像出典:フォトAC
ローンが残っている収益物件を売却する際の流れには大きく分けて6つの工程があります。
◇1.現状の把握
ローンがどのくらい残っているのか、現状を把握しておくのが重要です。金融機関から郵送される残高証明書またはWebサイトからローン残高を確認できます。
また、収益物件を売却する際は費用がかかるため、あらかじめ確認しておくのが重要です。仲介手数料・印紙税・抵当権抹消にかかる諸費用など、売却時にはさまざまな費用もかかります。どのくらいの費用がかかるのか、不動産会社に相談しながら売却しましょう。
◇2.不動産会社に査定依頼
現状を把握したら不動産会社に収益物件の査定を依頼します。不動産売却では、売り出し価格が重要です。相場と比較しながら売り出すことで売却活動を短縮できるため、自分が所有している物件がどのくらいなのか大体の売却価格を把握しておきましょう。
また、不動産査定は不動産会社によって査定基準が異なるため、相場よりも高い金額を提示される場合もあります。査定金額の高さだけで決めてしまうと、売れ残ってしまうケースも多いため、複数の不動産会社へ査定依頼して不動産会社を選ぶのが望ましいです。
◇3.不動産会社と媒介契約締結
売却する不動産会社を選んだら媒介契約を締結します。媒介契約にも専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3つがあります。3つの違いは次のとおりです。
・専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、同時に複数の不動産会社との契約や自分で買主を見つけることはできません。契約期間は3ヶ月ほどです。
専属専任媒介契約は、他の契約よりも売主の制限が多いですが売却活動を積極的に行ってくれます。自分に合う媒介契約を選択するのがおすすめです。
・専任媒介契約
専任媒介契約は、同時に複数の不動産会社との契約はできませんが、自分で買主を探せます。契約期間は3ヶ月です。
・一般媒介契約
一般媒介契約は、複数の不動産会社との契約が可能で、買主も自分で探せます。契約の期間も特に決まっていません。
◇4.売却・引き渡し・ローン返済
購入希望者が見つかったら売却と引き渡し、ローンの返済を行います。不動産会社を通して購入申込書が提出されるため、条件に合意し次第売買契約書を締結し決済・引き渡し日を決めましょう。
決済・引き渡し日が決まったら金融機関へ連絡し、残債と金利を計算して買主に提示します。引き渡し日は、売却代金を受け取り、ローンを返済するのが一般的です。
◇5.抵当権抹消登記を行う
ローンを完済または任意売却を行ったら抵当権の抹消も行います。決済・引き渡し後に金融機関より抵当権抹消に関する書類が届くため、自分で手続きするか司法書士に依頼しての手続きが必要です。
◇6.入居者へオーナーの変更通知を行う
すべての手続きが完了したら、収益物件に居住している住人がいる場合は、住人の方に買主と連名でオーナーが変わったことを通知します。
通知する際は、オーナー変更の旨・家賃の振込先・新しい管理会社名と連絡先・賃貸借契約や敷金の返還義務が新オーナーに引継がれていることを必ず知らせましょう。
収益物件のローンを返済する際の注意点とは?
収益物件のローンを返済する際は、いくつかの注意点があります。
◇収益物件ごとのローンを確認
複数の収益物件を所有している場合は、売却予定の物件のローンがどのくらい残っているのか、再度確認しておくのが重要です。複数所有している場合、金額を勘違いして覚えていることも少なくありません。
資金が足りないなどトラブルを防ぐためにも正しい金額を把握しておくのが大切です。
◇売却の諸経費を計算する
売却にかかる費用を計算しておきます。仲介手数料・印紙代・抵当権抹消費用・ローン返済手数料・登記名義 表示変更登記費用・賃貸管理解約違約金・預かり資金が発生するため、覚えておくのが重要です。
◇金融機関へ連絡する
金融機関によって手数料が異なり、借り入れから返済までの間に手数料が変動するケースもあります。来店での手続きは基本的に必要ありませんが、急に来店が必要になったり、準備に1ヶ月以上かかったりすることもあるため、事前に金融機関に電話で連絡しておくのがおすすめです。
◇共同担保のローンは返済額を確定する
複数の物件を所有しているオーナーの中には、共同で担保にしているケースがあり、評価額の確定ができないといったケースもあります。これまでに、事前に回答されていた売却予定の物件の評価額を払おうとしたら増額を求められた事例もあるため、注意が必要です。ローンを返済する際は、慎重に交渉を進めていきましょう。
収益物件のローンが残っている場合、売却は基本的に難しいですが、以下の条件を満たせば可能です。アンダーローン(物件の売却額がローン残高を上回る場合)は売却可能ですが、オーバーローン(売却額がローン残高を下回る場合)は追加の対策が必要です。
オーバーローン解消には以下の方法があります:自己資金から返済、追加融資、または任意売却です。任意売却では金融機関の承諾が必要で、高値での売却が可能です。売却の際は現状把握から始まり、不動産会社との契約、売却、引き渡し、抵当権抹消、オーナー変更通知が必要です。
ローン返済時は、残額の確認や諸経費、金融機関との連絡、共同担保の確認に注意が必要です。