収益物件の売却でかかる税金は?節税方法も解説
収益物件や事業用不動産の売却では、建物部分の価格に消費税が課されることがあり、売却益には譲渡所得税、住民税、復興特別所得税が発生します。
譲渡所得税の税率は所有期間によって異なり、5年以上で15%(長期)、5年未満で30%(短期)となります。さらに、収益物件売却時は仲介手数料などにも消費税がかかります。
一方、自宅売却では「3,000万円特別控除」や、相続物件に適用される「取得費加算の特例」「小規模宅地等の特例」などを活用することで税負担を軽減できます。これらの違いを把握し、節税方法を検討することが重要です。
目次
収益物件売却と自宅売却で税金は変わる?
不動産を売却する際、収益物件と自宅では税金の仕組みに大きな違いがあります。収益物件は事業用不動産として扱われるため、消費税や所得税の計算が複雑になることが特徴です。これらの違いを理解することで、税金対策や適切な手続きを進めるための基礎知識が得られます。
◇住居以外の建物を売却すると消費税が課税
不動産売却時、住居以外の建物(収益物件や事業用不動産など)は消費税課税の対象となる場合があります。非課税事業者の個人がマイホームを売却する場合、消費税は発生しませんが、事業用資産として扱われる収益物件の売却では注意が必要です。
非課税事業者が収益物件を売却し、その建物価格が1,000万円を超えると、2年後に課税事業者となる可能性があります。課税売上が1,000万円を超える場合、消費税納税義務が生じます。ただし、翌々年に課税売上が発生しない場合は消費税の影響はありません。
一方、不動産会社が売主となる場合、事業用資産として売却されるため、建物部分には消費税が課されます。同じ不動産でも売主の属性によって消費税の取り扱いが異なる点を理解しておくことが重要です。
◇消費税は土地にはかからない
消費税が「消費される商品やサービス」に課される性質を持つため、土地の譲渡は消費税法上、非課税とされています。土地は消費されるものではなく、利用可能な資源とみなされるため、課税対象外となります。
また、借地権など土地利用に関する権利の譲渡も同様に非課税です。例えば、収益物件を4,000万円で売却し、その内訳が建物2,500万円、土地1,500万円の場合、消費税がかかるのは建物部分だけです。
消費税率が10%の場合、建物価格2,500万円に対して250万円の消費税が発生しますが、土地1,500万円分には消費税は課されません。このように、土地が非課税扱いになることで、売却時の消費税負担を軽減できる点を押さえておきましょう。
収益物件の売却でその他にかかる税金
収益物件の売却には、譲渡所得税や住民税、復興特別所得税などの税金がかかりますが、それに加えて登録免許税や印紙税といった別の税金も発生することがあります。
これらの税金は売却時の契約内容や物件の状況によって異なるため、しっかりと理解しておくことが重要です。
◇売却益が出たときにかかる税金
収益物件を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が発生します。譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)」で計算され、取得費は購入額や減価償却後の建物価値、譲渡費用は売却にかかる経費(仲介手数料など)です。
譲渡所得税は、所有期間に応じて税率が異なり、所有期間が5年超の場合、長期譲渡所得として15%の税率が適用され、5年以下の場合は短期譲渡所得として30%の税率が適用されます。
他にも住民税が必要で、住民税は譲渡所得に9%(短期譲渡所得)または5%(長期譲渡所得)の税率がかかります。
復興特別所得税も発生し、所得税額の2.1%が必要です。なお、復興特別所得税は東日本大震災の復興のために使われている税金で、2037年まで継続されます。
◇売却自体にかかる税金
収益物件を売却する際、もし物件に抵当権が設定されている場合、抵当権を抹消するための登録免許税が必要です。売買契約書を締結する際に支払うことになります。
また、売買契約書に印紙を貼るための印紙税もかかります。印紙税の額は契約金額によって異なり、契約金額1万円未満の場合は非課税、1万円以上10万円以下なら200円、10万円超50万円以下の場合は400など、約金額が大きくなるにつれて印紙税も増加します。
売却にかかる税金は、物件の状況や契約内容に応じて変動するため、事前に確認しておくことが重要です。
収益物件売却で減らせる税金
収益物件を売却する際には、譲渡所得税や住民税といった税金が発生しますが、条件を満たすことで節税できる方法がいくつかあります。物件の保有期間や居住状況に応じて適用される特例を活用することで、税負担を大幅に軽減することが可能です。
◇譲渡所得税の節税
売却益にかかる税率は、物件を保有している期間によって異なるため、物件の保有期間に注意しましょう。譲渡年の1月1日時点で、物件を保有年数が5年以上であれば「長期譲渡所得」、5年未満の場合は「短期譲渡所得」となり、税率が大きく変わります。
長期譲渡所得の場合、所得税は15%、住民税は5%で、合計20%となりますが、短期譲渡所得の場合、所得税が30%、住民税が9%で、合計39%の税金が必要です。
保有期間が1年違うだけで、税率に大きな差が生じるため、可能であれば、売却を5年目に行うことで、税金を大きく節約できる可能性があります。
◇消費税の節税
収益物件を売却する際には、仲介手数料や司法書士への手数料、ローン返済手数料などに消費税の支払いが必要です。例えば、仲介手数料は通常、売却価格の3%+6万円で計算されるため、この金額に10%の消費税が加算されます。
売却価格が7,000万円の場合、消費税だけで21万6,000円が発生します。これらの負担を軽減するには、仲介手数料の減額交渉や、ローン返済手数料を抑える工夫が有効ですが、値引き交渉がかえって不利に働く場合もあるため、慎重に進めることが大切です。
◇「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を活用
特別控除の特例は、自分が住むことで物件を居住用財産として認められた場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。例えば、オーナーチェンジ物件に自ら居住すれば、売却益にかかる税金を大幅に減らせます。
この特例には「その土地を賃貸していない」などの条件がありますが、所有期間や居住期間に関する制限はありません。ただし、控除を受けるために意図的に短期間居住した場合は、適用外となる点に注意が必要です。
相続した収益物件ならさらに節税が可能
相続した収益物件は、さまざまな税制優遇を活用することで大きな節税が可能です。特に「取得費加算の特例」や「小規模宅地等の特例」を上手に利用すれば、相続税や譲渡所得税の負担を大幅に軽減できます。
◇「取得費加算の特例」を活用
取得費加算の特例は、相続財産を売却する際に譲渡所得税を軽減できる制度です。この特例では、相続税として支払った金額の一部を物件の取得費に加算できます。
譲渡所得税は、収入金額-(取得費+譲渡費用)で算出されるため、取得費を増やすことで課税対象所得を減らし、税負担を軽減することが可能です。
この特例を活用するには、相続または遺贈で財産を取得し、相続税を支払っていること、さらに相続開始日から3年10か月以内にその財産を売却する必要があります。これらの条件を満たすことで、大きな節税が可能となるため、計画的に進めましょう。
◇「小規模宅地等の特例」を活用
小規模宅地等の特例は、被相続人が生前に利用していた事業用や居住用の土地を相続する際、その土地の相続税評価額を一定割合減額できる制度です。不動産投資物件にも適用され、賃貸物件として利用されていた土地が対象になります。
例えば、賃貸アパートのほか、駐車場、自転車置き場、貸倉庫などの貸付事業用土地も適用範囲に含まれます。この特例を利用することで、相続税の大幅な節税が期待でき、相続人の負担を軽減できます。
不動産を売却する際、収益物件は事業用不動産と見なされるため、税金の計算が複雑になり、消費税や譲渡所得税などの税負担が発生します。
収益物件の売却に関しては、まず消費税が関わってきます。収益物件が事業用資産として扱われるため、建物部分には消費税が課税されることが多いです。特に、非課税事業者が収益物件を売却し、その建物価格が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じる可能性があります。
収益物件の売却で最も重要な税金は、譲渡所得税です。所有期間が5年以上であれば「長期譲渡所得」として15%、5年未満の場合は「短期譲渡所得」として30%の税率が適用されます。できるだけ5年以上保有してから売却すると節税が可能です。
また、譲渡所得税に加えて、住民税や復興特別所得税も課税され、これらの税負担が売却益に影響を与えるため注意が必要です。
さらに、収益物件の売却には他にも税金がかかる場合があります。例えば、売却時に物件に抵当権が設定されている場合、抵当権を抹消するための登録免許税や、売買契約書に貼付する印紙税が必要になります。
相続した収益物件に関しては、相続税や譲渡所得税を軽減できる「取得費加算の特例」や「小規模宅地等の特例」を活用できます。これらの特例を上手に利用することで、大きな節税効果を得られる場合があるため、事前に計画的に進めることが大切です。